【整骨院】自費診療への移行

昨日、私の自宅に、整体院のチラシが投函(ポスティング)されていました。
心身楽々堂と同じ、楠葉にある整体院です。

チラシを一目見て、

「あぁ、気の毒にな、困ってるんだろうな」

という印象を持ちました。

たいへん失礼ですが、典型的なダメチラシの見本のようだったからです。
もう、ツッコミどころが、満載です。
せっかくいただいたチラシなので、ありがたく、講義の材料として使わせていただきます。

さて、このチラシでは、おそらく集客できないでしょう。
もし集客できたとしても、質のよいお客様は得られないでしょう。
だから、結果的に、経営も伸びません。

このチラシから、いろいろな問題が見えてきます。
今回は、その中の「最も致命的な問題」について、言及したいと思います。

最も致命的問題、それは、チラシ内で自院を

「○○○整体院(鍼灸整骨院○○○付属)」

と自称していることです。

え?なぜこれが問題なの?―――と多くの方がお考えになるでしょう。
チラシをご覧になった一般の方も、何も思わないでしょう。
しかし、このように名乗るのは、経営上の致命的な問題を抱えていると私は見ます。

いま、整骨院(接骨院)の多くは、保険診療から自費診療(実費治療)への移行を必須課題としているそうです。
なぜなら、療養費制度が年々改変され、締め付けが厳しくなり、一昔前のように保険診療で売り上げを稼ぐことができなくなってきているからです。

これはある意味、当たり前の流れです。
今までが異常だったのであり、正常に戻りつつあるということです。

本来、疲労や生活費習慣等が原因となって生じる肩こりや頭痛、あるいは腰痛や膝痛等の慢性症状を保険で治療するのは、違法です。
整骨院の多くは、症状名を詐称して療養費の申請をしていたに過ぎません。

かといって、骨折や捻挫など、急性の症状で整骨院へ来る人は、ほとんどいません。
だから、いま、多くの整骨院が変革を迫られているのです。
新たな稼ぎ方、というよりも、正当な商売の方法を探さねばならないのです。

大半が、整体などの手技療法を採用し、自費診療や実費治療の比重を高めようと試みています。
その他、耳つぼダイエットや高齢者のディサービス等を取り入れるところもあります。

ある程度の規模を持つ整骨院なら、異なる事業に取り組むことも有効でしょう。
しかし、個人経営(もしくはそれに近いところ)の整骨院でそれをするのは、命取りになりかねません。
なぜなら、限られたリソースで二股をかけると、どちらも中途半端になるからです。

今回のチラシの整骨院は、整体院への移行を考えているのでしょう。
あるいは、併設でやっていくつもりかも知れません。
いずれにせよ、整骨院と整体院は、人に触れるという点で同じだと認識しているのでしょう。

しかし、本来この二つは、まったく異なるものです。
同じ麺類であっても、蕎麦とラーメンでは、材料、作り方、味付け、盛り付け、器など、すべてが異なるのと同様です。
店構えも異なるでしょうし、客層も違ってくるはずです。

整骨院が整体院を併設するのは、蕎麦屋がラーメンを出すようなものです。
それをやって許されるのは、蕎麦を極めた者だけでないでしょうか。
蕎麦好きの誰もが唸るような、極上の蕎麦を作ることができる者が、遊びでラーメンを作ってみる。
これなら、わかります。

しかし、大半の整骨院は、蕎麦が売れないから、ラーメンでも出してみるか、そんな感じではないでしょうか。
そんなラーメン、あなたは食べたいと思いますか?
あるいは、そんな蕎麦屋に魅力を感じますか?

いずれにせよ、中途半端です。
早々に、どちらか一方に特化すべきです。

チラシに「○○○整体院(鍼灸整骨院○○○付属)」と記載しているのは、迷いの顕れです。
事業をどちらにも絞りきれず、中途半端なことしかできない。
少なくとも私にはそう見えますし、こんな整体院にはまったく魅力を感じません。

整骨院という呼称のまま、すべてを自費診療に切り換える。
あるいは、整体院という呼称に改める。
まず、どちらにするか、決めるべきだと思います(私は後者を勧めますが)。

ここの院長さんも、必死なのだろうと思います。
セミナーに参加したり、マニュアル本を読んで、一生懸命に集客の方法を考えているのでしょう。
もしかしたら、コンサルタントの先生のお世話になっているかもしれません。
このチラシも、その粋を集め、自分で作ったのだろうと思います。

しかし、今のままでは、おそらくうまくいかないでしょう。
整体師ですら、これだけで食べていけるのは、100人に一人いるか、いないか。
そのように、言わるほど厳しい世界です。
そんな中、片手間に整体をやって、お客様に支持されるとお考えでしょうか。

個人経営の整骨院は、とても多いと思います。
前述した理由により、廃業に追い込まれるところも少なくないようです。
そして、小手先のテクニックやノウハウで、何とか乗り切ろうともがいている方は、本当に多いのではないでしょうか。

人に深く関わる療術の仕事は、とても魅力的です。
心身の痛みや不調で悩んでいる人も多いので、大きな可能性があると思います。
人さまに心から喜んでいただける、本当に素晴らしい仕事です。

せっかく志したのだから、生涯かかって究めてみたいと思いませんか。
だったら、手間暇を惜しまず、いま、本当に何をすべきなのか、ぜひ考えてみてください。

整骨院
*写真はネットで拾ったものであり、本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール

西田 聡
西田 聡心身楽々堂 代表
1960年、大阪生まれ。2008年、47歳の時に、突如、24年間勤務した会社を辞し、整体師に転身することを決意。多額の住宅ローンを抱え、当時高一と中二、二人の息子がいる身で脱サラし、未経験の仕事で起業するなど狂気の沙汰と、周囲の誰もが猛反対する。しかし、耳を貸さず、整体院の独立開業を断行。案の定、失敗、挫折、絶望の連続で、辛酸をなめ尽くすが、ぎりぎりのところで踏み止まる。修得した整体手技療法を基盤に、合氣道修行で得た心身修養の精髄を加味した「心整体法」を着想。病院で治らない慢性疾患や自律神経失調症専門の整体院という独自路線を歩み、自力で整体院経営を軌道にのせる。組織に依存せず、束縛されず、自分の良心や信念をいっさい曲げることなく、己の身一つでサラリーマン時代を大きく超える収入が得られることを証明する。その経験を生かし、脱サラ・起業に特化した整体塾を主宰。まったくの未経験者を「オンリーワンの整体師」に育てあげることについては、日本一の手腕を持つと自負する。これまでに200名以上を指導、50名を超える整体師を輩出する。現役の整体師を続けながら、大阪府枚方市、千葉県船橋市を拠点にして後進を育成。また、各地で一般の方に向けたセミナーや体験会を開催し、癒しの人間学「心整体法」を伝えている。

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