整体で開業する際、医療系国家資格を取得した方が有利なのか?
「開業にあたり、国家資格を取得した方がいいのでしょうか?」
時々、そのような質問や相談を受けます。
一般的に国家資格は信頼感があるので、開業に有利だと考えるのでしょう。
健康保険が使えるから有利、と考える人もいるようです。
中には、整体師が国家資格ではないことを知り、驚かれる方もいます。
整体師と柔道整復師の違い、整体院と整骨院(接骨院)の区別がつかない方も少なくないです。
私も、開業するときによくわからず、モヤモヤしていました。
なので、今回は資格と呼ばれるものについて、整理をしてみましょう。
その上で、医療系国家資格を取得した方が有利かどうか、私の意見を述べたいと思います。
目次
整体に関係する「資格」について
まず、整体や人の健康に関わる「資格」について言及しましょう。
資格と呼ばれるものは、大きく分けて、次の2種類あります。
1)国家資格
2)民間資格
1)国家資格
一般的には、医療系国家資格と呼ばれるものです。
例えば、次のようなものです。
– 柔道整復師
– はり師、きゅう師(鍼灸師)
– あんまマッサージ指圧師
– 理学療法士
– 作業療法士
– 言語聴覚士
このうち、柔道整復師と整体師を混同する人が、少なくないようです。
これについては、後ほど言及したいと思います。
2)民間資格
こちらは、資格というよりも「認定」と呼ぶ方が事実に近いでしょう。
例えば、次のようなものがあります。
– 整体師
– カイロプラクター
– オステオパス
– アロマセラピスト
– リフレクソロジスト
※ 他にも様々な呼称があるため、挙げだすときりがありません
有資格者と無資格者
一般的に、「有資格者」とは1)を指します。
上記にはあげませんでしたが、医療従事者である医師、看護師、薬剤師なども同じです。
そして、2)は「無資格者」と呼ばれます。
多くのみなさんが「資格」と認識しているものは、認定証や修了証のことです。
これらは、民間団体や個人が認定している証に過ぎません。
公的には、何ら効力をもちません。
整体で開業するのに国家資格は必要か?
では、職業として他者の身体に触れることができるのは、1)の有資格者だけでしょうか。
いえ、そうではありません。
以下、wikipediaより引用転載いたします。
医業類似行為を業として行うことに対して、1960年最高裁判所昭和35年1月27日大法廷判決は無免許での医業類似行為を禁止することは合憲である旨、判示したが、禁止処罰するには人の健康に害を及ぼすおそれの認定が必要なことを判示した。これが半世紀を経た今日まで 「人の健康に害を及ぼすおそれがない以上、法律に違反しない」 ため、業として行うことの事実上の根拠となっている。
非常に大雑把に申せば、「安全であれば法には触れない」ということです。
ただし、これは人によって解釈が異なります。
グレーだという人や、違法であると主張する人も決して少なくありません。
いずれにせよ、整体師という公的な「資格」はありません。
そういう意味では、整体師は漫才師、手品師、あるいは漁師と同じです。
あくまでも「自称」に過ぎません。
柔道整復師と整体師の違い
時々、柔道整復師と整体師を混同している人を見かけます。
人の健康に寄与する点では同じですし、名称も似た印象を受けるからでしょう。
しかし、両者は全く違います。
柔道整復師の業務は、以下の通りです。
接骨院や整骨院では、柔道整復師によって、骨・関節・筋・腱・靭帯などに加わる急性、亜急性の原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対し、手術をしない「非観血的療法」によって、整復・固定などを行い、人間の持つ治癒能力を最大限に発揮させる治療を行っています。
また、保険を使えるのは、以下の範囲です。
接骨院や整骨院での施術には、健康保険や生活保護法による医療扶助、労災保険や自賠責保険が適用されます。
これらの保険が適用される範囲は、前述した急性又は亜急性が原因の外傷に対する治療です。医師の同意が必要なのは「骨折」「脱臼」の応急手当を除く治療を施すときだけです。 打撲、捻挫、挫傷などは医師の同意は必要ありません。
慢性的な肩こりや内科疾患が起因の腰痛などに対する施術は健康保険の対象外となります。 また、仕事中や通勤途中のケガは労災保険適用です。交通事故によるケガは自賠責保険の適用となります。
※以上、日本柔道整復師会のウェブサイトより引用いたしました。
大雑把に申せば、柔道整復師が扱うのは、急性疾患(主として怪我)です。
それに対し、整体師が扱うのは、それ以外です。
一般的には、慢性疾患や精神疾患、あるいは健康維持・増進などです。
ただし、治療や医療行為を行えるのは、柔道整復師です。
整体師は施術を行うことはできますが、治療や医療行為を行うと違法になります。
ところが、実際は、整骨院や接骨院でも、慢性疾患の治療を行うところがほとんどです。
中には、保険を使っているところも少なくないようです(当然、違法です)。
最近は、取り締まりや監視が厳しくなり、不正利用が難しくはなっているようですが…
国家資格を取得した方が有利か?
結論を申せば、私は有利とは思いません。
不利でもありませんが、お金と時間がもったいないと考えています。
数年前になりますが、電車の中で、トップの写真のような専門学校の広告が目にとまりました。
広告には、次のように書かれていました。
医療系国家資格!!
今こそ、本当の知識と技術が必要とされています!
人に感謝され、喜ばれる仕事をしよう!
300〜500万円の学費を支払い、三年間かけて通い、勉強すれば、国家資格は取れるでしょう。
信頼を得るために国家資格が必要なら、それはそれで良いと思います。
しかし、国家資格を取得しても、人に感謝され、喜ばれるような仕事ができるかどうかは疑問です。
知識や技術は、必要です。
しかし、現場で使えなければ、意味がありません。
痛みや不調で悩む方々の中には、死にたいとおっしゃる方もおられます。
特に現代社会においては、原因不明の心身の不調で苦しむ人が、非常にたくさんいます。
そのような方々と真剣に向き合うのが、私たち整体師の現場です。
医者もさじをなげるような症状であっても、あらゆる手を尽くして改善に導くこと。
その積み重ねにより、本当に人を癒したり、健康に導くための実力は身につくと私は考えています。
なので、専門学校へ行く時間があれば、少しでも多くの経験を積むこと。
そのほうが、何倍も生きた学びができると思います。
また、今は各種専門セミナーが盛んに開催されています。
専門学校へ行くお金があれば、良質で実践的なセミナーを受講する方がよほどいい。
私は、そう考えています。
これから開業する人へ
これから開業する人は、不安が大きいと思います。
様々な情報や意見があるので(この記事もその一つ)、迷うことも多いと思います。
そのような中、では、どうすればよいのか。
いくつか、アドバイスがあります。
- よく調べて、事実を知る
- いろんな人の話や意見を聴く
- 自分と対話する(本当に何をしたいのか、どうありたいのか)
- 直感を信じる
その上で、自分で判断することです。
もしかしたら、間違えたり、誤った道へ進むかもしれません。
でも、それでいいではないですか。
勉強になったと思い、またやり直せばいい。
その繰り返し、積み重ねによって、人は成長するものだと思います。
そして、人としての成長こそ、整体師であれ、柔道整復師であれ、職業人の成長でもあります。
頑張りましょう!
執筆者プロフィール
- 1960年、大阪生まれ。2008年、47歳の時に、突如、24年間勤務した会社を辞し、整体師に転身することを決意。多額の住宅ローンを抱え、当時高一と中二、二人の息子がいる身で脱サラし、未経験の仕事で起業するなど狂気の沙汰と、周囲の誰もが猛反対する。しかし、耳を貸さず、整体院の独立開業を断行。案の定、失敗、挫折、絶望の連続で、辛酸をなめ尽くすが、ぎりぎりのところで踏み止まる。修得した整体手技療法を基盤に、合氣道修行で得た心身修養の精髄を加味した「心整体法」を着想。病院で治らない慢性疾患や自律神経失調症専門の整体院という独自路線を歩み、自力で整体院経営を軌道にのせる。組織に依存せず、束縛されず、自分の良心や信念をいっさい曲げることなく、己の身一つでサラリーマン時代を大きく超える収入が得られることを証明する。その経験を生かし、脱サラ・起業に特化した整体塾を主宰。まったくの未経験者を「オンリーワンの整体師」に育てあげることについては、日本一の手腕を持つと自負する。これまでに200名以上を指導、50名を超える整体師を輩出する。現役の整体師を続けながら、大阪府枚方市、千葉県船橋市を拠点にして後進を育成。また、各地で一般の方に向けたセミナーや体験会を開催し、癒しの人間学「心整体法」を伝えている。
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